こんにちは、Portafortuna♪光琉です。
ついに完成
オリジナルレシピで作るマカロンコック、やっと完成しました!やった~!
マカロンコックというのは、マカロンの生地、クッキーの部分のことです。
失敗して失敗して嫌になりながらも挑戦を続けること、少し大げさに言って200回。
3か月強かけてついに出来上がりました。本当に苦しかった~。マカロンは上級者向け難易度高のお菓子であることは初めっからわかっていましたが、まさかここまで苦労するとは。難しいと言っても10回も作ればできるやろうと高を括っていましたが、なんのことはない200回かかりました。基本のレシピ(配合)で作るマカロンコックでさえ80回目ぐらいでようやくちゃんとできるようになって、そこから自分好みの味にアレンジしたレシピ(配合)に変えて作ること100回以上でようやく完成しました。
マカロンはひとつじゃない
日本でマカロンと言うと、生地の周囲にピエ(フランス語で足)と呼ばれるフリル状のものができているもの=マカロンコック2枚でクリームなどを挟んだものを指しますが、それは正式にはマカロン・パリジャン(パリのマカロン)あるいはマカロン・リス(つるつるしたマカロン)、マカロン・ムー(やわらかいマカロン)と呼ばれるものです。でもフランスにはナンシーとかサンテミリオンとかブーレイなど各地にマカロンと呼ばれるお菓子が存在していて、それぞれ見た目が全く違っています。パリ以外のマカロンはどれも素朴な感じです。材料はパリも含めてどれも一緒だそうです。
さて、マカロンとマカロニ似ていますね、語源は一緒と言われています。カトリーヌドメディシスがイタリアからフランスに伝えたんだそうです。彼女はイタリアのいろんな文化をフランスに持ち込んだ人としても有名ですね。
マカロン試行錯誤
材料と手順
マカロンコックの基本の材料は卵白とアーモンドプードル(アーモンドパウダー)と砂糖の3つです。あとは着色料と作り手によって卵白を泡立てる際に乾燥卵白やレモン果汁、クレームタータ(酒石酸カリウム)などをプラスします。当店でも乾燥卵白を使っています。
卵白を泡立ててメレンゲをつくったら粉類を混ぜ、マカロナージュという独特の工程を経てから生地を絞り、自然乾燥させた後にオーブンで焼く。たったこれだけなんですよ、それなのに途方もなく難しい。少なくとも僕には途方もなく難しい。
マカロン失敗の代名詞・空洞

緑のマカロンコックの上部の隙間これがにっくき空洞(黄の方は成功)
マカロンの失敗例としてピエが出ない、表面がひび割れる、表面にシワがよる、表面に油シミができる、底や中身がなく表面の皮だけになる、などがあります。そして誰もが避けて通れない失敗、何度も経験する失敗、試練、それが空洞です。マカロンコック上面の皮(表皮)のすぐ下に空洞ができて、本来空洞部分にあるべき生地が底に沈んでしまう失敗です。すぐ下に空洞があるので表皮が簡単に割れます。空洞、間違いなくこれがマカロンコック作り最大の難関です。僕がやらかした失敗200回のうち少なくとも190回はこの空洞です。これに悩まされたんです。
失敗と原因の関係
マカロンコック作りが難しいと言われる理由は、ひとつの失敗に対して原因が複数考えられるところにあります。
例えば「ピエが出ない」失敗についても、マカロナージュ不足、焼成温度が低い、乾燥過多などが考えられます。
「空洞ができる」失敗もメレンゲの泡立て不足、マカロナージュ過多、乾燥過多、オーブンシートの選択不適、焼成温度・時間の不適などが考えられます。
乾燥過多が原因で「ピエが出ない」失敗になることもあれば、「空洞ができる」失敗になることもある。失敗と原因が一対一でないのがやっかいなところです。だから失敗の原因を突き止めるのが難しいんです。
動画サイトや記事、本を手あたり次第当たって勉強しても、隣にマカロン作りの先生が居てつきっきりで指導してくれない限り一筋縄ではいきません。わからなくてもとにかく暗中模索で試作を繰り返すしかないんです。失敗しては調べる、失敗しては調べるの繰り返しです。その間には、本当は上手くできていたのに「そこが悪いんちゃうかな?」とか考えちゃって改悪しちゃうなんてことも。メレンゲ完璧、マカロナージュも完璧、あとは温度と時間だけやろうと睨んでも、その後何度も何度も失敗を繰り返すと「いや、実はメレンゲがちゃんとできとらんのとちゃうやろか?」とか考えちゃうわけです。そうすると余計遠のいちゃって「わから~ん!もう嫌や~」となっちゃうんです。
空洞
そんなこんなで行ったり来たりを繰り返して、気づいたら200回もの失敗を積み重ねちゃいました。
僕の失敗のほとんどは空洞だったわけですが、その原因は結局オーブンシートの選択とオーブンの温度設定、焼成時間でした。メレンゲの泡立てやマカロナージュについては今思えばかなり最初の方でクリアできていました。
オーブンシート
オーブンシートってただの敷き紙やん!そんなんで変わるの?って思うでしょ?変わるんです。紙にするのかシリコンマットにするのか、1枚なのか複数枚重ねるのか?その下の鉄板(天板)も1枚か複数枚重ねるのかよって焼成温度・時間が変わります。
焼成温度・時間
そしてその焼成温度も最初から最後までずっと同じ温度なのか、途中で変えるのか、変えるならどのタイミングで変えるのか、途中でオーブンのドアを開け閉めして温度と湿度を一度下げる工程を入れるかどうか。焼きあがったらそのままオーブンの中でじっくり火を通すのか、オーブンからすぐ取り出して鉄板のまま冷ますのか網にとって冷ますのか。5℃単位30秒単位で調整します。めちゃくちゃ繊細なんです。
オーブン
それにオーブンと一言で言っても、ガスオーブンと電気オーブンでは温度・時間設定が変わるし、業務用と家庭用でも変わってきます。さらにガスオーブンでもメーカーによってまったく変わるし、同じメーカーの同じ型番のオーブンでも1台1台個性があるので変わるんです。だから「上手に焼ける温度・時間をみつけた!」と言ってもそれはウチのオーブンの焼き方でしかないわけです。他のオーブンを使って同じように焼成しても失敗します。マカロンコック作りで一番難しいのは間違いなくこの焼成です。多くの方が多くの情報を提供してくれていますが、全て参考にしかなりません。「この人はこういうやり方ね」でしかないわけです。同じようにやってもたまたまでない限り100%上手くできないんです。だからほとんどの皆さんが最後に「お使いのオーブンに合わせて温度・時間は調整してください」と書かれています。そうするしかないもん、僕だってそう書くわ。
レシピ(配合)でも変わる
さらに、レシピ(配合)が変わればまたまったく違う温度・時間設定にしないといけなくなるんです。「そりゃそうやろ」と思われるかもしれませんが、そのシビアさと言ったら。卵白:アーモンドプードル:砂糖=1:1:2というのが基本の配合なんですが、これを1:1.1:2とかにするだけで途端に上手く焼けずに空洞ができたりします。だから僕も基本のレシピでは80回目ぐらいで焼けるようになったのに、オリジナルレシピではそこからさらに100回以上失敗を繰り返したんです。実際にはたぶんある程度の幅は持たせられるとは思いますが、それぐらいシビアなんです。
砂糖でも変わる
砂糖もグラニュー糖と粉糖を使うのですが、その配分も影響します。粉糖(純粉糖)の原材料ってグラニュー糖オンリーです、グラニュー糖をさらに細かい粒子にしたのが粉糖(純粉糖)です。ということはグラニュー糖と粉糖の両方使うと言っても、結局は全てグラニュー糖なんです。なのにその配合で変わるんです。
グラニュー糖はメレンゲを作るタイミングで使い、粉糖はアーモンドプードルと一緒に粉類を混ぜるタイミングで使います。例えば砂糖を全部で10グラム使うとしても、グラニュー糖1グラム粉糖9グラムとするのと、それぞれ5グラムにするのとではまったく変わってくるんです。メレンゲの状態が変わってきますから。
こんな感じでマカロンコックはとても繊細なお菓子なんです。レシピ(配合)を決めるのと、オーブンシートの選択、焼成温度・時間の選択を同時進行的に考えながら開発しなくてはならないお菓子です。
ガルニチュールは無限大
マカロンコックができたら次は間に何を挟むか、これは楽しいところですね。挟むものは総称してガルニチュールと呼ばれます。料理の世界では付け合せを意味するガルニチュールですが、お菓子の世界ではフィリング(詰め物)の意味になります。マカロンのガルニチュールはガナッシュ(チョコレート)、バタークリーム、ジャムが主流です。いろんなガルニチュールがあってどれも美味しそうですが、当店でもこれからいろいろ開発していきます。
提供&販売開始
さて、オリジナルレシピのマカロンコックはようやく完成しました。「試作費用使い過ぎっちゃう!?」とマダムの目線も気になるし、これだけ頑張って作ったマカロンをアフタヌーンティーだけの限定提供とするのも勿体ないし、一人でも多くの方に楽しんでもらいたいし、それに何と言ってもかねてから「販売して欲しい」とお客様からたくさんお声をかけて頂いています。ということで早速8月23日(土)からイートインでの提供・店頭販売を始めます。ガルニチュールのヴァリエーションが乏しいのでさしあたってはレモン、いちご、ガナッシュの3種類だけですがぜひお楽しみ下さい。レモンといちごはかつてアフタヌーンティーで提供して大人気だったフレーバーです(当時はオリジナルじゃない基本の配合のマカロンコックでしたが、明日から提供するのはオリジナルレシピのマカロンコックで作ります。自称「進化したマカロンコック」)。